2007年7月14日土曜日

新井田孫三郎

 船戸与一の小説「蝦夷地別件(上)(中)(下)」に出てくる松前藩の番頭です。
 この、男が、実にいい。

 時は江戸末期、蝦夷、松前、江戸が舞台のこの小説に絡むのは、ロシアの南下策と江戸幕府の蝦夷地召上げ。ロシアの占領にあえぐポーランド人が、ロシアの目を蝦夷地に向けさせ様と画策した所から、歯車が動き出します。

 佐藤優の「国家の罠」を読んだ時、あっ、と思ったのは、この小説の主人公の内の一人、「新井田孫三郎」を思いだしたからに他なりません。松前藩はアイヌを相手に権謀術数を施し、江戸幕府は蝦夷を直轄地とせん、として松前藩から取り上げるべく権謀術数を施します。

 本書の解説でも指摘されている、船戸与一の分身である坊主「清澄」に語らせる、松平定信評、「蝦夷地政策に関しては権謀術数の権化」というセリフからもわかるように、元々国際法なんてのがなかった時分の「領土」の考え方は、「獲るか盗られるか」という、かなり植民地政策的というか、帝国主義的で、何かギラギラしたものを感じますね。

 その松前藩の、今で言えば「官僚」にあたる「番頭」の新井田孫三郎と、佐藤優が実にうまい具合に重なったのです。 佐藤優は主に国外の仕事をしていましたが、新井田は主に幕府向けの職務を、持てる力全てを注いで忠実にこなそうとします。
 その通り、新井田は、「職務に忠実」なのであって、「藩主に忠実」な男ではなかったのです。船戸は、この男を描く事によって、現在の日本の官僚の一つの姿を浮き彫りにしたように感じます。

 佐藤氏は、何故か僕には、仕えるべき国民ではなく、「職務」に忠実な官僚像のステレオタイプに見えます。

 まだ未読であれば、ご一読をおススメしたい本です。

 また、アイヌには独特な楽器「トンコリ」というリズム系弦楽器てのがあって、始めて聞いたのは音のみだった為、シンセサイザーかよ!って思いました。ものすごく澄んだ音色の楽器です。これでユーカラ(英雄譚)を語るんですねェ・・・なんでそんな事を知ったかというと、角松敏生氏のアルバム、「INCARNATIO」に入ってたから(へへ)。このアルバムいいですよ。すごく。出来れば、DVDも見た方がいいかと・・・。アイヌのトンコリ奏者、OKIさんと、角氏がどうやってこのアルバムを作っていくか、なんてドキュメンタリーもついてたりするので。ちょっと高いスが・・・。

---
船戸与一
蝦夷地別件〈上〉〈中〉〈下〉

佐藤優
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

OKI(オキ)
「トンコリ」
「Kamuy Kor Nupurpe(カムイ コル ヌプルペ)」



BGM : レイナード・スキナード - Lynyrd Skyned
One More From The Road - Deluxe Edition -
↑濃ゆい~!!