2007年7月19日木曜日

イラク撤退から学ぶ、外交戦の「勝ち方」

 米民主党提出のイラク撤退法案が否決された。これは全く想定通りだったが、かなりの接戦だったようだ。但し、7/17のブログにも書いたが、大統領と同党の古参議員が提出した案はまだ審議されていないし、まだ幾つかあるようだ。非政権の民主党のメンツ的にも、この判断と得票数は中々良い数字に思う。

 しかし撤退や兵員削減はいつかは必ず判断しなければならない話である。韓国や日本に駐留している期間が長すぎるだけで、もう、自国以外に兵を留める理由は、兵を出す側の国民が納得する雰囲気や時流では無いと思うのだ。世界は移動機関や、通信機器の発達で確実に狭くなった。

 これが戦争ビジネスに確実に影響している。また、広範囲にダメージを与える事が出来る兵器の運用開始にも関係があるだろう。

 しかし、イスラエルが、アメリカが撤退か兵員削減した後のこと(予算、兵站等々々々・・・)、言ってしまえば国連にゲタが預けられ、安全(と、彼らの正しい戦争)が担保される迄は、決まらないのでは?

 というのが当面の予想で、もし、削減か撤退が決まった時は、それらのバックアップシステムが整ったか、運用に向けての軌道に乗る算段がついた、と考えるのが無難なように思う。それか、見捨てられるか、というのがあるが、とりあえずそれを考えるのはよそう。

 ターゲット国は、勿論、日本と独国だ。日本は従軍慰安婦問題で、今迄の国連決議が全く無視され、今迄以上の予算を「福祉活動」つぎ込む事になるだろう。ドイツは、ホロコーストの2世問題で、今迄以上の「福祉活動」が求められるだろう。日本、ドイツ共に、国連内での発言権の拡大と、費用面の充実が今迄以上に求められるだろう。日本と独国が勝つ事は許されない。だからある勢力にとって使い途は、まだまだこれからだと言っていい。

 しかし、アメリカの兵力と経済力を核としない国連等どだい無理なのだ。日本はアジアの中での地位を、精神面、論理面で、戦後、初めて真面目に構築しないと、国連加盟国の納得なんてとてもじゃないが得られるとは思えない。また、ドイツは国連抜きで、EUの中で筆頭として暖かく迎えて貰えるだろうか?

 アメリカを核としない国連体制で、イスラエルを守る算段を整えるのが現実的、と言えるならば、世界的な経済エリートは、嫌が応でも、地域の細かい圧力勢力を無視できない。アジアなら、まだ経済力のある日本が居るが、中国の経済力の発展は目覚ましいし、ロシアは日本に自国の法律を強要する等揺さぶりをかけてきている(豊進丸の件等)。ドイツでは、このままいくとまたナショナリズムに火が付くかもしれない。日本はリーマン一揆で終りかねないがそれすら起こる程とは到底思えない。(なんてエラい国民が揃っている国なんだ!)

 そもそも国連の機関である世界銀行で、ネオコン筆頭家老であるポール・ウォルフォウィッツが女性問題で総裁を辞任するなんて話も現実問題として露出した(その時、次の総裁は、アメリカ人が望ましい、なんて話しも米大統領がしたとかしないとか)。そして先月6月末には次代の総裁に、ゴールドマンサックス出身のドイツ系アメリカ人、HB-財務省-国務副長官も勤めたロバート・ゼーリックとなった(GSのアドバイザーもやってたとの記述あり。投資銀行野郎だ。ユダヤ系であるかどうかは知らない。ポール氏より現実的で怖そうなんスけど・・・)。という事は、あまり変わっていないように感じる。

 ベルリンの壁が無くなり、ソビエトがロシアに変わり、民主主義が勝利した後、それまでの西側の秩序は、最大の敵を失った為、結束する必要がなくなり、またぞろ帝国主義が氾濫し始めているのでは無いだろうか。しかし、NATO、EU圏で通貨統合した事実は今になって物凄く意味のある事だったと、その先見の明に頭を下げるしかない。冷戦後の圧力合戦を見越していた-と思うしかないね(リンク先、結構エグイで。見てみて下され!)。一応、地域的な仲裁機関がある、というのは、なんとも心強いではないか。

 となるとアジアである。日本は地理的にEUに参加出来るわけがない。とすると、太平洋圏で、って逃げる訳にもいかない。やってもいいが、じゃ、韓国、北朝鮮、台湾、ロシアは?となる訳でねェ・・・。両方に金出してたんじゃやってけないでしょう。

 これから日本にとって必要なのは、戦前に持っていたアジアの秩序を日本の手で構築するぞっていう気合と論理が必要になってくる訳だが、今度はそれを正しい方向で使用しなくてはならない。で、それを、背負っていくのが、日本のリーダー・・・という風には考えてはいけない。その論理構築のベースとなるのが、日本国憲法に結び付けたい所だが・・・

 あくまで合議制の中のカースト制遵守、これがアジアの鉄則である。WTOに代表される強者の貿易独占なんてありえない。経済エリート&フリーター&ニート共!それが何を意味するか、わかるかってんだコンチクショー!

 六カ国協議を含め、EU圏を見習い、地域の仲裁機関を国連の下部組織として地道に提案し、京都・奈良に茅葺の本拠地を建てていくのがいいのではないか、と思います。(台風の時は色々な人種の職員と村人総出で守るとこれまた一致団結できるのでイイね)

 それを考えると、設立の経緯と意図がなんであれ、豊進丸の件で、国際海洋法裁判所に持ち込んだのはうまかったが、「アジアの何処かに所在地のある」国連の下部機関じゃないのがツラい。

 外相の説明は的を得ているが、対国としては今回も平行線のままか、という幾分尻切れトンボな感じがしなくもない。早く次段階へシフトして欲しい(勝手に話を進めるな!)

 ロシアも合議制の上参加した(したかーないか)、アジアにある、アジア地域に住まう人々の仲裁機関なら納得するだろうけど(そもそもそうゆう機関がアジアにあれば、こんなバカな話になってない筈)、西側諸国の論理で構築された機関にダメ出しされたら、この話を、日本との対話に載せようとしたロシア人の要らぬ嫉妬を買うハメになってしまう。

 しかし、この路線は日本を取り巻く環境では1国対多国の性格を持つ可能性が、現在は多いにあるので慎重に話しを進めるべきだ。あくまでイニシアチブを取るのはバカ多数決の民主主義ではなく、共通の倫理観の最小公倍数であり、それが”民主主義的”に見えれば言う事ナシ。ただ、彼らは、西側機関は利用できる時は利用するが、利用されるのは大嫌いなハズだ。正に「帝政ロシアは屈さない」ってヤツだ。

 そこら辺は、「後ろから平気で人をバッサリ斬れる、瀬島龍三仕込み(*1)」の谷内外務事務次官さん、どう考えているのか、ちょっとお聞きしたいわね。また、「負けない戦」、か。誰が言ったかしらないが(谷内氏が言ったとは思えない。宗旨変えしたかな。それともブラフか)、4.5対5.5で、4.5の勝ちを目指してくれって願う。冒頭に紹介した民主党のイラク撤退案は、得票数では勝った。これは勝利だ。しかし、必要な得票数が得られなかったのは負けだ。こうゆう勝ち方を望みたい。また外務省は、佐藤優が目を付けられて外された後の次世代で有能な奴をガンガン量産して欲しい。その為には、こうゆう問題を現場仕事としてこなしていくのがOJTにもなる。

 で、今回の教訓は、アジア地域版の、国連の専門的に特化した下部機関を、どんどん日本本拠地で作れればいいのにってコトの路線はほぼ間違い無いのではないかと思う。そこで解決出来ない時は国連の上部構造を利用できるって仕組みは良ぐねっぺ?

 例えばアジアの海洋法に関しては日本、農法に関しては中国、原子力はロシア、といった住み分けをする事で、「技術」を分散し、交流を行い、バランスをとるわけだ。1国から直接国連、というのは日本好み、アジア好みではけしてないと思う。

※東京はダメよ。ゴミゴミし過ぎ。エコノミックシビリアンとインテリバカだけ生息してればいーの。絶対、外国人受けのいい京都、奈良か、新潟(えぇ?何でだって?海に面して気候は冬以外いいし、日本の技術力の象徴の発電所が存在しているではないかあっ!)だ。ちなみにちょっと位の火事や地震なんぞで停止させる必要はない。あの場所にあるからこそ抑止力、という見方もできるんでね。肉を切らせて云々、というのは元来日本のお家芸ですんで。あんまり誉められたモンじゃないが・・・

*1:「オフレコ!」vol3(平成18年8月3日発売号)での、田原、佐藤、手嶋対談から。正確には、渡辺幸治・元ロシア大使の発言を佐藤がこう引用している。「谷内だけには気をつけろ。後ろから平気で人をバッサリ斬れる人間だ。瀬島龍三仕込みだ」と。

 これは内務外務関係無く、そうゆうキレ者だ、という意味に僕はとった。あと、この対談はネット公開はしない方がよかった、また削除すべきではと、極私的には思うのだが・・・(A Hrefしちゃってマスけどン)。

 また、狸の田原氏は出てこないが、上記*1を読んだ方は、未読であれば、「インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)」も併読して欲しい。同じく、同書を読んだ方で先の対談を読んでいない方は、リンク先迄ご足労願いたい。幸福な既視感を味わえることと思う。

サブテキスト:瀬島龍三 さんについて
大東亜戦争の実相
沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

※まぁまぁ・・・一応、両方ってコトで許してちょだいな!