2007年8月11日土曜日

BS押井特集1 「ビューティフル・ドリーマー」

 1960年代中盤~70年代中盤に生まれた人達の中で、「うる星やつら」は、その名前を知らない人はいないんじゃないか、と思う位有名な作品である。

 ちなみに自分は小中時代サンデー派だったので、一応原作マンセーだった。この為、TVシリーズや、映画第一作にはあまり興味がなく、あまり見ていなかったと記憶している。

 しかし、何が原因か忘れたが、中学2年の時、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を見に行った。当時売り出し初期の吉川光司のデビューにして、映画発出演のプロモ映画との抱き合わせだったのも覚えている。

 で、「うる星」だけ見て帰る筈が、この「ビューティフル・ドリーマー」を見終わった後、その吉川主演映画迄見るはめになった。理由は簡単、もう一回「ビューティフル・ドリーマー」を見る為である。
 それ位、子供の自分が面白いと思ったからに違い無いのだが、実は、「よくわからなかった」というのが本音だったのが、今回の、BS特集で判明した。
 おー20年数年ぶりに「あー、そうゆう事だったのかー」と納得したのでちょっとうれしい。

 藤岡さんが声の出演をした怪人は、押井監督自身だったんだ、とか、ラムは高橋留美子大先生の娘的愛玩キャラだったんだ、とか、あの「バク」は、高橋留美子そのものだったんだ、という人間関係を描いたハナシだったんですねー。

 なるほどねー。それで辻褄が合う。「うる星やつら」という魅力的な題材で、押井監督始めスタッフは遊びたかった。しかし現実問題、ラムは高橋留美子のものであって永遠に手に入らない鏡餅だ。だったら「映画という表現方法を用いて独占しちゃえ」って事で、ラム(高橋留美子の娘)に手を出すが、結局あたる君に、その夢を挫かれ(あたるは挫いたつもりはない)、高橋留美子という、実在の人物の分身である、「マルC(高橋が持っている著作権)バク」が、こんな下らない話回収しちゃえって事で、その世界そのものを無に帰してしまう。

 著作者としては、「こんな下らない話白紙にしてしまった」のだが、映画はもう作られて観客は見ているから、最後に出てくる高橋留美子であり、原作マンセーのファン代表の分身である「ラムの子供姿の女の子」から「責任とってね」と言われる。あれはあたる君に言ったのではなく(その上を見上げたショットから)、監督やスタッフ、そしてこの映画を見て「面白い!」と思った観客に対して突きつけた三行半だったのだ。なので、あたる君は理由がわからず落下するのみであった。

 そしてやっと高橋の描く「うる星」の世界に返ってきたあたる達は、これから始まる「高橋の意に沿う、学園祭前日」を始めるのだが、時既に遅し。彼らは映画の尺が無くなってしまっているのに気付いていない。
 そしてそんな登場人物達をあざ笑うかのように出てきた「うる星やつら2」の文字は、あのエンドロールの時間のみ、高橋留美子の世界を描く筈だった「うる星やつら2」の空間を描いてあっかんべーを決め込んでいる押井のアイロニーで、それ以外の時間は、押井監督以下スタッフが大暴れした、「ビューティフル・ドリーマー」という、「うる星やつら」の登場人物だけ間借りして製作した全く別の映画であった、という事だったと、今になって気付く。

 深いぜ押井監督。

 で最後に押井監督の分身である無邪鬼が呟く「あの人らと付き合うのは、並大抵の事やおまへんでー」というセリフ自体は、勿論原作の高橋留美子大先生や、フジテレビの担当、キティの担当、TV版、映画版スタッフ、プロデューサー等、この映画に対して関わった本当に全ての人に対して、押井が呟いた、感謝と尊敬と皮肉の入り混じった言葉であろう。
 そして無邪鬼(=押井)は去るのだが、マルCバクも連れている、という事で、「今後もそんな”夢”をオレは作り続けるよ」、という宣言で、けして身をひいたわけではない、という事だ。

 所で、この映画を見ているが為に、夢を扱う話があると、どうしてもこの映画を思いだしてしまうのです・・・。

 僕が今まで見た中で最大にリスペクトしていたのは、笹本祐一氏の「妖精作戦」シリーズの第二弾、「ハレーション・ゴースト」である。この作品も「夢」をテーマに扱っているが、その小説の1P目をめくると、「ビューティフル・ドリーマー」への謝辞迄乗っている。なんとアマゾン先生で調べると全部絶版ですかそーですか残念です。ただこの作品、PART1から順番に読まれる事を期待します。続き物なのと、未だに名作だと思っておりまする。。

【追記】最近、友人から「涼宮ハルヒの憂鬱」とかいうアニメが面白いから、と、言ってDVDを貸して貰った。「ビューティフル・ドリーマー」と「ハレーション・ゴースト」、自分だったらどう終わらせるか、を夢想してたら、出版できてしまった、って感じでした。30分×十数話、無駄に長く、前述2作の様なスピード感が無いんで惜しい気がしましたネ。

妖精作戦 Part1
妖精作戦 Part2 ハレーション・ゴースト
妖精作戦 Part3 カーニバル・ナイト
妖精作戦 Part4 ラスト・レター